日本には地域に根差し、発展してきた大手メーカーは数多くあります。しかし、地域性が絡むゆえに、エンジニア人材が集まりにくく、慢性的な人材不足に陥っているケースが増えています。こうした人材難を解決した一例として、長野県でスタートしているプロジェクトを紹介します。

プロジェクト概要

テクノプロ・デザイン社では、当社の戦略研修を受講した人材を、人材難を抱えている地域のクライアントに配属し、ニーズに応えていく取り組みをスタートしている。中でも長野・松本サテライトでは2022年からすでに6社で実績を積んでいるが、今回はその中のエプソンアヴァシス株式会社様(以下、エプソンアヴァシス様)におけるプロジェクトを紹介する。

【開発事例・インタビュー】イノベーションを起こすためのAWS人材育成を協働 [エプソンアヴァシス様]

慢性的な人材不足。なんとしてもAWSクラウドを活用できる人材が欲しい。

エプソンアヴァシス様は、組込システム開発、サービス開発・運用、業務システム開発・運用を主軸に事業展開しているセイコーエプソングループ企業である。長野県に本社・事業所を擁している。エプソンアヴァシス内では、各種開発案件において、コスト面などの様々な観点で、オンプレミス環境からクラウド環境への切り替えの必要性が高まっていた。今回のプロジェクトの舞台となるビジュアルプロダクツ事業においてもAWSクラウドの活用へと舵を切ることとなった。
このクラウド活用の動きに伴い、社内の業務量も大きく増え、協力会社からの人材補填による組織強化を図る必要が出てきた。

しかし…AWSの知見を持つIT人材が思うように集まらない。そもそも長野勤務できるエンジニアの中にAWSの資格保有者や知識がある人材が不足していることが明らかとなったのだ。開発スケジュールを考慮すると時間的な猶予もままならない状況だった。
エプソンアヴァシス・事業推進本部/VP事業推進部の部長、廣前氏は、テクノプロ・デザイン社・松本サテライトのベテランエンジニア、高山に相談を持ち掛けた。

そのときの心情について、廣前氏は語る。
「高山さんは当時、当社の担当になったばかりだったのですが、すでに経験豊富な方ですべての課題を『自分ごと』として捉えてくれました。その当事者意識の強さは安心感につながりました」

【開発事例・インタビュー】イノベーションを起こすためのAWS人材育成を協働 [エプソンアヴァシス様]
(エプソンアヴァシス・事業推進本部/VP事業推進部 部長 廣前氏)

高山は打開策として「研修修了生の配属」提案を行った。この提案の背景について高山はこう語る。

「ご相談いただいた2018年当時は、製造業界全体の流れとして、社内にサーバーを設置して開発を進めるオンプレミス環境からクラウドへと変化しているタイミングでした。そうした中、それまで長くお付き合いをいただいていたエプソンアヴァシス様はすでにクラウドの活用は始まっていましたが、既存のクラウドからAWSクラウドへの移行を進めていくと伺いました。そこでさらに今後の組織拡充を踏まえて当社の研修修了生の配属を提案しました」

研修を終えたばかりの人材がプロジェクトへ。ともにイノベーションを生み出すために。

研修を受講したばかりの人材に、クライアント社内の課題解決ができるのか。そんな疑問はなかったのか。
高山は続けてこう話した。
「研修生に対しての育成面や配属先でのフォロー体制について、営業担当や私のようなベテランのエンジニアが密に連携することで万全なものにできるような取り組みを行っていきました。
例えば、研修期間内にAWS資格を取得するなど、技術知識についてはすでに学んでいます。しかしプロジェクト現場は教科書通りにはいきません。そこで、コミュニケーションスキルや『なぜ、この業務を行うのか』といった担当業務の意味を深く理解することなど、私自身の経験で培ってきたノウハウを余すところなく伝えていくことを心がけました」

【開発事例・インタビュー】イノベーションを起こすためのAWS人材育成を協働 [エプソンアヴァシス様]
(テクノプロ・デザイン社 松本サテライト・チームリーダー 高山)

研修修了生がプロジェクトに参画することで、エプソンアヴァシス様にはどのような変化が起きたのだろうか。

廣前氏は、まずプロジェクトの意義から語り始めた。
「当社を含むセイコーエプソン全体の長期ビジョンとして、『持続可能でこころ豊かな社会を実現する』ことを目指し、2021年に【Epson 25 Renewed】を発表しました。そこでは5つのイノベーションの実現を唱えており、その一つに私たちの部門が関わる『ビジュアルイノベーション』があります。映像体験などのビジュアルコミュニケーションを通して、人・モノ・情報・サービスをつなぎ人々のライフスタイルを支援するというものです」
その実現のためには、今まで強かったハード面だけではなくソフト面にコミットできる人材を強化する必要がでてくる。

「テクノプロ・デザイン社から来ている研修修了生の皆さんは、AWSを活用できる人材として活躍してもらっており、『ビジュアルイノベーション』を手掛けていく上で、重要な人材に成長していると捉えています」

【開発事例・インタビュー】イノベーションを起こすためのAWS人材育成を協働 [エプソンアヴァシス様]

研修修了生がプロジェクトに参画する上でのレベル感について高山は語る。
「もちろん、プロジェクトに入る際には私の中で一定の基準を設けています。しかしそれは、デジタルジャッジできるような技術知識ではありません。
AWSの知識を踏まえた上で、『こうすれば効率的になりませんか』『こうすればサービスが向上できる』といった提案がクライアント様にできるかどうかです。
自分の考えを発信できる力とも言えるかもしれません。
このプロジェクトで研修修了生が従事できるのは、『ビジュアルイノベーション』に向かって同じベクトルでスタートでき、一緒にその実現を目指せるポジションです。
若手エンジニアとしては、貴重な経験を積めるチャンスでもあるのです。
その環境の中にいることを常に自覚してスキルアップを図っていけるように、研修修了生とはプロジェクト参画後も、連係を密にしながら伴走している感覚ですね」

イノベーションを起こせる人材へ。今後求められるエンジニアの付加価値とは。

今後求められる開発エンジニアの在り方について、廣前氏は語る。
「テクノプロ・デザイン社のエンジニアの成長スピードは速く、参画してから3カ月程度でもプロジェクトに欠かせない人材として活躍してもらっています。
その上で今後、メーカーがユーザーから求められるのは多様性など、今までの製品設計の思想から一段上のレベルになっていくと思います。その側面から考えると、『ユーザビリティの視点を持つエンジニア』の価値が高くなってくることは言うまでもありません。その付加価値についても、私たちと一緒に共有できることを期待します」

【開発事例・インタビュー】イノベーションを起こすためのAWS人材育成を協働 [エプソンアヴァシス様]

そのためにも高山が重要視する「発信力」は必要だと続ける。

「ハード、ソフトといった技術領域にはこだわらず、開発に関わるエンジニア全員が意見できるような環境づくりが大切でしょう。そしてそこで出た意見やアイデアをお互いに尊重し、活かそうとする。その流れをつくることでメーカーとしての『ビジュアルイノベーション』にもつながっていけばいいのではないでしょうか」

廣前氏が率いるプロジェクトには現在、テクノプロ・デザイン社から2名の研修修了生が配属されている。
一人ひとりがどのような成長を実現し、付加価値をつけてイノベーションを起こしていけるのか。その答えは、もう目の前にあるのかもしれない。

<配属先の研修修了生の声>

【開発事例・インタビュー】イノベーションを起こすためのAWS人材育成を協働 [エプソンアヴァシス様]

前職:工場の保守運用
AWS研修は、基礎的なことからしっかりと教えてもらった印象が強く、充実していたと思います。しかし当然のことながら、実際のプロジェクト現場では想定以外の出来事も起こったりするため、臨機応変の対応も求められます。研修だけではないコミュニケーションスキルなどもさらに伸ばしていけば、もっとできることも増えていくのではないかと思っています。

【開発事例・インタビュー】イノベーションを起こすためのAWS人材育成を協働 [エプソンアヴァシス様]

前職:アパレル店員
全くの未経験から研修を受講しました。そんな私でもわずか数か月の間に、AWSエンジニアとしてスタートできていることが驚きです。もちろん、ここまでも多くのサポートがあってのことですし、クライアント様のご理解をいただいている中でスキルアップできていると思っています。今後、さらにスキルアップを行って自分自身のキャリアパスを描いてみたいと思います。

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