村田博

通信系システム及びその関連機器の制御ソフトの開発に20 年間携わっているテクノプロ・エンジニアリング社(以下「TPE」)の村田さん。電話機やPHS など身近で使われている技 術に関する興味深い話題や、派遣就業という働き方に対する姿勢など、様々なお話をお聞きしました。

通話の先にある可能性に惹かれ通信の世界へ

村田さん
村田博さん
テクノプロ・エンジニアリング社
柏支店 村田博さん

まだ世の中に『ISDN』という言葉があまり知られていなかった頃、そのISDNに関する講義を大学で受けたことをきっかけに電話交換機への関心が湧いた、と語る村田さん。遠くの相手と話すツールでしかなかった電話が、交換機の技術開発が進むことによって今後、実現するであろう様々なサービスの主役になるかもしれない ― その可能性の大きさから眼が離せなくなってしまったそうです。
話の冒頭に、村田さんから電話交換機の歴史を簡単に説明していただきました。古い時代を舞台にした映画などに時折登場する最初期の交換機は、電話をかける人からの要望を聞いた交換手が連絡先に応じた電話線ジャックを手動で接続する方式で『交換台』とも呼ばれていました。その後、回線と利用者の増加に伴い『ステップ・バイ・ステップ交換機』という自動式交換機が登場。この機器はダイヤルをひとつ回すたびに相手先が絞り込まれ、最終的に番号を全部ダイヤルし終わると相手先につながる仕組みでした。
その後も交換機は発展を続け、格子状に配置した多数の金属棒を互いに接触させスイッチ動作を行なう『クロスバー(クロスバ)交換機』、そして電話番号を解析し回線の経路を決める機能をコンピュータ化した『電子交換機』へと変遷したのちに、村田さんが奮闘する対象となった『デジタル交換機』が登場します。
「大学を卒業後、念願かなって総合電気メーカーに入社。それから電話交換機のシステム開発を担当した10年間で通信方式も有線から無線へと大きな変革を遂げました。」と、PHS データ通信カード開発を担当していた頃の思い出を語る村田さん。

村田さん
通信中に通信エリア間を移動すると、交換機側で最適な基地局に切り替えていく『ハンドオーバー』という処理を行う必要があるのですが、この処理の瞬間に起こる通信遮断をいかに解消するかがエンジニアの腕の見せどころです。ですから、そのノウハウは通信各社がなんとしても秘密にしておきたい部分だと思います。携帯電話よりひとつの基地局が通信をカバーする範囲が小さいPHS は使う人の移動に伴って頻繁に基地局エリアも変わるため、その度にハンドオーバーを繰り返す必要があります。また、ハンドオーバー時の通信チャネル割り当ての際に、使用周波数の利用者の有無をチェックする処理に何秒か必要なためその間に切れてしまうことも多く、PHS の通信に対する不評の要因になっていました。その悪評を払拭しようと開発されたのが『高速ハンドオーバー』で、これは端末に受信回路を複数内蔵し、通信中の基地局以外にも安定した電波を発する他の基地局を探して次々に電波状態の良い基地局に切り替える、という技術です。

PHSハンドオーバーの仕組み

PHSハンドオーバ

お客様に近い仕事の醍醐味

TPEへの転職に至った経緯をお教えいただけますか?
村田さん
希望に胸を膨らませて就いた交換機の仕事でもありましたし、不満があった訳ではないんです。ただ、PHSに関わる仕事に従事し、自分が携わった商品をお客様が直接お店で購入して喜ぶ姿を目にして、「これっていいな」と思うようになったんです。TPEの入社説明では、担当する仕事の内容があらかじめ明確になっていたこともあり入社を決心しました。
 TPEでデジタルテレビのチューナー制御ソフト開発を担当していた時には折を見て量販店に通い、実際にお客様が購入する様子を観察して嬉しさのあまり小躍りしたり、購入を検討する様子で販売員にテレビの説明をしてもらい、少しでも機能が褒められると心の中でガッツポーズを作ったりしていました(笑)。自分が作った商品をお客様が購入してくれた時の喜びは技術者じゃないと理解できないかもしれませんね。あくまで一般論ではありますが、大手メーカーではエンジニアも全体の一部としての役割を果たすことが求められます。結果として深い専門技術は身につきますが、技術分野の幅は狭まる傾向があるのではないでしょうか。また、エンドユーザーが直接触れる商品の開発に携わる機会も少ないように感じます。とはいえ、私が担当していた交換機の仕事でその色彩が濃かっただけかもしれませんが…。

知識と経験でトラブルも「なんとかなる」

お客様に近い仕事に就くことができたとはいえ、仕事での苦労も絶えなかったそうですね。
村田さん
村田博さん

最近はインターネットテレビで映画などのコンテンツをダウンロードして視聴する方も増えたと思いますが、開発する側にはあれが『くせもの』なんですよ…。実際に私が業務で関わったある事業者では動画が止まってしまう不具合が頻発し、問い合わせ ― この場合はクレームと言うべきかもしれませんが ― を受けて必死に調査しても、送信サーバーや受信側のテレビ、それに双方の相性なども複雑に影響しているため同様の不具合が再現できず、途方に暮れたことも多々ありました。
でも、私のもともとの楽天的な性格のおかげか、いつも「なんとかなる」と思っていましたし、実際に「なんとかなる」ものです。これまで一度も失敗したことがないという訳ではありませんが、「できない」と言って逃げ出したことだけはありません。とはいえ、ただ「なんとかなる」と考えているだけで問題が解決するとはいくら楽天家の私でも思いません。そんな時に難題を解決する力として役立つのは『積み重ねた経験』と『豊富な情報量』なんです。いろいろな情報を得ること自体が好きだということもありますが、常に情報のアンテナを全方位に張りめぐらせて専門分野外の様々な情報も入手する努力を心がけ、そうやって得た知識と「なんとかなった」という経験の数、解決した課題の数の組み合わせで自分の引き出しが増えていく感覚です。

力を発揮できる場を確保する努力を

それでは最後に、派遣という形態で働くことに対する村田さんのお考えをお聞かせください。
村田さん
派遣先では『今みずからが持つ技術で貢献できることは何なのか』を常に考えなければならないと思っています。その上で、「自分に不足しているな…」と感じる部分は「誰にも負けない!」という気持ちを持って貪欲に習得することが大切です。任された仕事を指示通りに完遂することはもちろん重要ですが、自分なりの考えや工夫を加えながら様々な提案をすることも必要です。とはいえ配属先によって仕事の進め方や業務内容は千差万別ですから、自分で最大限の努力や工夫をした上で、どうしても力を発揮することが困難だと考えたなら、いつまでも我慢し続ける必要はないと思います。ただし、「やりたいようにやればいい」という考えでわがままを通せ、と勧めている訳でもありません。
お客様の都合は最優先ですし、加えて営業担当者や支店の計画、考えもあると思います。ですから、なにより自分の希望を大切にしてほしいと思いながらも、その順番が一番後回しになってしまうケースが生じることも仕方ないでしょう。でも、自分の力を充分に発揮できる環境で働き続けること、それが結果として誰にとっても得になることではないでしょうか

村田さん、貴重なお話をありがとうございました。