大野孝

テクノプロ・IT社でオフィスマネージャーとしてソフトウェア評価の業務に従事する大野さん。元々は制御ソフトの設計開発を担当されていましたが、現状に満足せずエンジニアとしてさらに高いレベルのキャリアを築こうと2006年にテクノプロ・IT社に入社しました。広い視野から物事を捉え適切な判断を下せる能力に加え、面倒見の良い人柄が評価されて配属後半年でリーダーを任されるようになり、現在は受託開発センターで複数の評価案件のプロジェクトリーダーを務めています。大野さんに対するお客様からの評価も非常に高く、受託業務そのものも拡大傾向にあります。今回は大野さんに、評価業務を成功させるための秘訣についてお聞きしました。
大野孝

『要望』v.s.『現実』のバランスが業務の質を左右する

 「評価手順書は、技術者の自己満足で作るものではありません。」と大野さんは話を切り出します。「評価手順書を可能な限り詳細に設計すれば、不具合をより多く発見する確率は当然高まります。ですが、必要としない評価項目も同時に含まれてしまう上に、評価作業に要する期間も長くなってしまいます。評価手順書を設計する指針には、『評価範囲』『ドキュメントの種類とその記載方法』『スケジュールと納期』『コスト』など様々な要素があり、それぞれ適切にバランスを取らなければならないのです。」
 評価手順書は「こうあるべきだ」という『べき論』に則って作成するのではなく、お客様の要望をよく聞き取り、それを充分に理解したうえで設計することが重要、と指摘する大野さん。しかしお客様の要望をすべて受け入れることが必ずしも良い結果に繋がる訳ではなく、品質確保のために評価担当者として技術的に譲れない部分については時間をかけてお客様に説明することも大切だといいます。そのために、時にはお客様の内部組織体制や開発プロセスそのものに意見を述べることさえあるそうです。
 「また、一般にどのメーカーも開発予算は結構持っているのですが、評価や品質保証にかけられる額は思いのほか少ないものなんです。それに加えて、開発設計工程は予定が押して日程が延びてしまいがちなのですが、全体スケジュールは最初に決められてしまっていることが多いので、結果として後工程である評価に割ける期間が短くなってしまうという点についても考慮に入れる必要があります。」(大野)

人間関係や顧客企業のプロセスにも気配りを

 技術面の意識合わせばかりではなく、大野さんは人間関係の重要さにも言及します。
 「評価部門から設計のミスを指摘されたら、開発担当者は当然良い気持ちはしませんよね。そんなふうに、言ってしまえば『些細なこと』で部門の間に軋轢が生まれることだってあるんです。評価を担当する部門が社内の同僚ではなくアウトソーシング先の人間であればなおさらかもしれません。さらに、メーカーや部門によって設計部門が単体テストや結合テストまでを一貫して担当する会社もあれば、結合テスト以降からを評価部門が担当するケースなど、プロセスはさまざまです。技術力に違いはなかったとしても、考え方や文化には大きな違いがあることが多いですね。でも、『良い商品を作る』というのは製品に携わる全員に共通の目的のはずなんです。」(大野)
 お客様側は『何を』『どこまで』やってほしいのか、評価担当者として『どこまでやるか』『どこまでやるべきか』を充分に検討し、必要となるドキュメントの内容まで事前に決めておくこと、その配慮がお客様が期待する評価のアウトプットを生むことにつながり、最終的にお客様の満足度向上を実現する鍵なのでしょう。
 大野さんはお客様の技術的情報や予算、要望ばかりでなく周辺情報全体を把握して評価手順書を設計することの重要性を強調していましたが、それを可能にする顧客との対話能力の重要性は、ソフトウェア開発企業に対する顧客の満足度を調査したレポートにおいても『コミュニケーション能力』が技術レベルと同様に評価項目に挙げられていることにも表れています。

『評価』という仕事

 現在大野さんが担当する評価業務は、『知識がない人が使用する』ことを前提とした評価を行う、いわゆる『ユーザーテスト』と呼ばれるものです。『評価業務』や『テスト』という言葉だけを聞いてしまうと、なんとなく開発工程よりも簡単な仕事のように思えてしまうかもしれません。ところが、ソフトウェアの『評価』というものは、操作説明書通りの操作では発見することができない不具合を発見しなければならず、設計開発とはまったく別の難しさを抱えた仕事です。だからこそ、設計開発の担当者以外の立場で実施することで効率的に遂行できる仕事であるとも言えます。
 大野さんは、評価を担当する技術者の心構えとして大切なこととして次のように述べています。
 「評価手順書は経験の浅い技術者でも作業ができるように設計されています。しかし、手順書に書かれていることをただ単に作業として実行するのではなく、まず『評価する商品自体を理解する』ことを大切にしてほしいですね。自分がその製品を使うと仮定したら何が『便利』で、何が『不便』なのかを考え、他人事ではなく自分に身近な事として業務に取り組む。それが評価担当者として欠かせない心構えだと思います。それは評価業務に限らず、ものづくりのどんな工程にも当てはまることだと言えるでしょうが…。」(大野)