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2020.09.25

「ニューノーマル時代のAIエンジニア/データサイエンティストの働き方」セミナーを聞いてみた

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左から壇氏、橋本氏、小牛田氏 左から本セミナーの登壇者である壇氏、橋本氏、小牛田氏

データサイエンス業界は今世間を賑わせている職業の一つである。 この「流行りの職業」に、既に就業している者も目指す者も、どうやって頭角を現すのか、ポジションを見つけるのかが課題だ。
ましてこの「ニューノーマル時代」。 その答えをどう提示するのか。本セミナーに参加してみた。

新型コロナウィルスの影響で、働き方がどう変わっていくのか?

働き方は「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ

登壇者が異色の組み合わせだったのが興味深かった。
まずはスパコンの開発、AIの企画、開発をしていたベテランの小牛田氏、テクノプロ・デザイン社でデータサイエンティストの育成に携わる橋本氏。この二人が中心になって話を組み立てる。
そこに新人エンジニアの壇氏が質問を投げかける。
「Q&A」形式とのことだが、テンポよく分かりやすい。ウケを狙いに行かない自然な談笑を交えての三人の雰囲気にこの会社の内側を見た気がする。

まず議題に上ったのが新型コロナウイルスによる働き方の変化。スキルより会社に合う人材を雇用する「メンバーシップ型雇用」から、仕事に人を合わせる「ジョブ型雇用」に変化する、という雇用のあり方についてその変化に触れた。
今後、時間ではなく成果で評価する「ジョブ型」にシフトすることが考えられることが述べられた。
「ジョブ型の社会では、新人でも高度なスキルさえ身に付ければ給料は高くなるのか」の視聴者からの質問に対し、「(社会の)制度そのものが変わると思う。実際にデータサイエンティストの同期社員同士でも給与に格差が出てきていると感じます。」と橋本氏が回答した。
また、例えばインセンティブ(成果報酬)が支払われる営業職は「ジョブ型」と言えるが、違うところとして、残業代の考え方だ。労働者の時間に対して賃金が支払われる、というのはジョブ型ではない、とした。

新人でも高給取りに? 同期社員同士でも給与に格差が出てきている、と橋本氏

自動化されるものとは?

「自動化」というキーワードの本質について壇氏が橋本氏に質問を投げかけた。
それに対し、自動化を実現する手段として、RPAでの対応が最初に考えられると思います。
RPAでの自動化を進めていくうえで、AIも重要なキーテクノロジーとして、連携していくことになります。

ニューノーマル時代のデジタル化はどう進むのか?

日本のAI事情と歴史

日本は、新型コロナウイルスで奇しくも業務のデジタル化・自動化の遅れを露呈してしまった。
小牛田氏は、今後、デジタル化が進み、AIやロボットに代替えされる雇用が56%に達するという統計を紹介。
これは世界平均の50%を上回るという試算だ。
この変革により、無くなる仕事もあるが、データサイエンティストのような新たな職が生みだされる、とした。

「ビジネストランスレーター」について議論が交わされる

その後、本セミナーのテーマである「ニューノーマル時代のAIエンジニア、データサイエンティストの働き方」について議論された。
まず、我々が普段口にする「人工知能 AI」とは何か、について、以下橋本氏が登壇した。
最近のAIの活躍といえばAlphaGOによるトップ棋士への勝利や、 テスラ社のイーロン・マスクCEOが「近くレベル5自動運転の達成間近」と発言して、話題となっている。
これらは、AIの第3次ブームのきっかけとなった深層学習をベースにしている。
歴史的にみると、AIは単純な制御プログラムを発祥とし、その後ルールベースによるAIが使われた。
筆者がまず思い浮かべたのは「AI」が搭載された「ドラゴンクエスト4」だ。(実際にパッケージにそう書いてある。)ボス戦に、効くはずのない即死魔法を連呼され、暗たんとしたのを思い出す。およそ学習とは程遠いものだった。
時は変わり2000年代には前述の機械学習や深層学習の実現をみる。これにより現在のブームに繋がった。

AIの機能領域

AIには細かく3つの機能がある。
AIを実用化に結び付けるには「識別」「予測」「実行」という3つの機能領域があるとのこと。
「識別」とは動画認識、音声認識、画像認識、言語解析がある。
「予測」は数値予測、意図予測、ニーズ予測、マッチングがある。
「実行」は作業の自動化、表現形成、行動最適化、デザインといったものだ。

AIの機能領域について橋本氏の説明を聞く、壇氏

画像認識や動画認識と言えば分かりやすい。最近の車での例を挙げると、カメラを通して認識した白線から、車線の中央を走るようなプログラムや、前の車を検知して距離を一定に保つよう自動制御するなど、があてはまるようだ。
この機能領域を各分野に当てはめた説明が続く。
モノづくりでは「異常検知・予測による予防保全」、(上述の)"実行"として「材料設計の効率化」といった事例がある。
また、経営企画では「可視化による経営状態の把握」、(上述の)"識別"として「CV(コンバージョン)の向上や顧客調査支援」といった事例がある。

「識別」のAIの適用事例
CVの向上や顧客調査の支援

ダイレクトメール送付したが購入率が上がらない

→顧客分析から購入確立の高い人のランキングを作成し、DMを送付
「予測」のAIの適用事例
異常検知・予測による予防保全

工場停止時の製造ロスや点検コストの削減をしたい

→設備故障による製造ロスを削減、設備故障による点検コストを削減
「実行」のAIの適用事例
人材配置の最適化に人事

社員のスキルを管理するシステムがなく新規事業に最適な人材が分からない

→社内の人事データから新規事業の遂行に必要なスキルを持つ人材のレコメンド

AIの民主化はあるか?

ここで、視聴者より「AIは誰もが使えるツールになるのか」との問いがあった。なるほど、今は一部の技術者のものであるAIがいずれ誰もが利用できるツールになると。プロ用画像編集ソフト「Photoshop」は今や、インスタなどでは人差し指一本で加工が行え、それに代替えできる時代だ。
これに対し、橋本氏は「Python」のモジュール化された高度な機能が初心者でも扱えるライブラリ機能について触れ、この動きが行きつく先にはAIの民主化が実現するのではと答えた。
逆にデータサイエンティストなんていらない、なんて時代も考えられる。
ただ、今データサイエンティストを目指している人にとっては杞憂だろう。
かつてCMSやSNSが登場し「webデザイナー」なんていらないと言われた時代もあったが、一方で「WEBディレクター」が登場し、デザインだけでなくマーケティングとコンテンツを結び付けwebの価値を高めることに貢献した。
「ビジネストランスレーター」がまさにそれだろうと筆者は妄想したが、結局今でもwebデザイナーの重要性は高い。要は小牛田氏や橋本氏がこのセミナーのテーマとして述べている「働き方」によるだろう。

その後、AIがどう使われるのかに話が及んだ。
小牛田氏は「AIに入れるデータの処理をどうするか」という課題があるという。
実務の現場ではデータの前処理だけで工程の8割を使ってしまうこともあるそうだ。先に出た「民主化」を実現するにはこの課題のクリアが必要とした。

AIツールはexcelのように民主化する? AIは民主化する?の質問に答える小牛田氏

ニューノーマル時代にAIエンジニア・データサイエンティストの働き方はどう変わっていくか?

AIエンジニア・データサイエンティストに必要なスキルは?

AIを取り巻く事業は、主に2つの業種に分けることができる。
分析結果をビジネスに活かす「データサイエンティスト」と、分析をシステム化し運用する「AIエンジニア」だ。
また、これらの業種には段階的なスキルセットが存在するという。
①プログラミングなどIT知識
②統計数学の基本知識
③機械学習の中身を数学的概念で理解できること
④論文などから新たな機械学習の手法を実装できる
これら段階的なスキルが存在する。
テクノプロ・デザイン社ではこれらスキルセットについて、段階的に身に付けられるよう研修を行っていると、育成に携わる橋本氏は言った。
今後重要性を増すと思われるビジネスと分析(アナリティクス)をつなぐ「ビジネストランスレーター」というポジションにも触れられた。経営者に分析の結果を通訳する役目といったところか。
データは存在するだけでは意味がない、それを利活用できる知恵者が必要だ、ということだろう。
冒頭、小牛田氏が述べた「新しく生まれる職業」がまさにこれだ。
また、AIエンジニアやデータサイエンティストにはドメイン知識を持たない方も多いので、ビジネスと結び付ける現場サイドの役割も期待される。まだこのポジションは少ない。

場所と時間に捉われないニューノーマル時代の到来でAIエンジニア、データサイエンティストはどう変わるのか

柔軟な働き方を重視しているAI人材は、コミュニケーションや効率的な共同作業に必要なデジタルツールを使い、少人数によるチームで目標をたて効率的な作業を行う。こういった「プラクティス」の確立が不可欠で、このコロナによって激変した社会では、働き方においてこれらを追求することが求められる。

企業が求人をだす「データサイエンティスト」に問題も

データサイエンティストをたくさん入れたが失敗した、という企業があるが、これはどの職業がどう役割を果たすかを雇う側が把握してないケースがある。
これまでデータサイエンティストの細かい仕事の役割や機能について述べたが、求人を出す際、役割を細かく記載されていないケースがある。
雇われる側も、入社後思ったのと違った仕事をしている、という状況があると橋本氏の周囲からも聞こえてくるようだ。

生き残るデータサイエンティストの働き方と雇用の需要

この問いに橋本氏は”自分に何ができるのか、他人に評価してもらう”という自己分析が大切だといっている。
数学ができる、だからデータサイエンティストを目指す、といっても十把一絡げにはできない。これは上述の企業が求人を出す際の失敗例にも見て取れる。
また小牛田氏がつなぐ。「仕事をするとき、使っているデータが全体の中でどういう意味合いなのかを理解せずに進めると、後でそこに無い別のデータが出てきたときに見当違いの答えを出すことがある。だから精度や結果にこだわると、いただいたデータだけで成果を出そうとする。違うデータを入れて検証をし、本当に正しいのかを追求する広い目が必要です。」
デジタルトランスフォーメーション(デジタルの機能を使ってビジネスに価値を生み出すという概念)と言われるが、市場に合わせた勉強の仕方が重要、と橋本氏。橋本氏がデータサイエンティストになってから3年が経つが当時求められていたスキルからは変わっていて、現在の需要に応えるためにも情報収集を怠らないという。
そこで高いスキルをもつことで評価される。
小牛田氏は、「データサイエンスの能力だけでは問題解決につながりません。例えばITエンジニアの知識も必要で現場にいる様々な職種とチームを組む際、コミュニケーション能力が必要になるからです。アルゴリズムにこだわってチームコミュニケーションができないと生き残れません。マルチなスキルが求められます。」

生き残るデータサイエンティストの働き方 データサイエンティストの働き方やスキルについて、橋本氏と小牛田が語る

データサイエンティストとクライアントとの関係

データサイエンティストの日常で、お客様とのミーティングに費やす時間は、多い。
プログラムやデータとの格闘に費やすものと思っていた壇氏からの質問を受けての答えだ。
データ分析は重要であるが、データだけではわからない隠れた要因をお客様との会話から見つけ出すことは重要だ。
小牛田氏は一例としてお客様とのミーティングが奏功し商談をまとめたある建築機械会社との経験について紹介。顧客の課題解決に貢献した。単純にデータだけを見ていては見えない部分もあり、そこから課題を見つけられるか、それがポイントだ。 この例では結局AIによる自動化に繋がった。
データサイエンティストの仕事のやり方として、まずはデータの特徴、を見つけること。橋下氏はそれを「宝探し」と形容したが、ビッグデータを扱う際、そこにデータサイエンティストは小さな特徴を見つけることから始める。クライアントはそのビッグデータの概要は把握しているが、データの「特徴」については関知しない。ここに仕事の特殊性がある。

本当の課題に向き合う〜仕事の受け方

ただ、クライアントから提供されたデータだけでは結果も出せないことがある。その場合、正直にクライアントにその旨伝え、これからデータを集めて本当の課題解決に取り組みましょう、と伝える。これはデータサイエンティストに限った話ではないが、要は「ないものをある」と言ってしまうのが良くない。もしこれに異を唱えるクライアントがいるとするなら、彼らとて神ではないので無からは何も作れない、ということを知るべきだろう。

ここでSEとして従事している視聴者からの質問「現在Pythonを勉強し、機械学習の分野に関わろうと思うがどう勉強すればいいのか」との問いに対して、橋下氏は「ネットワークセキュリティ、PC周辺機器についてはしっかり抑えつつ、統計検定2級も必要。というのも、客先にデータについて説明するには見やすいグラフが書けるようになるといいです」 プレゼン資料の作成能力の高さにもデータサイエンティストには必要とのことだ。

昨今はネガティブな報道、情報が大勢を占める中、この社会を変えるには、データサイエンティストとしてやらなければならないことが多く、先陣を切って状況を変えていかなければいけないと感じた新入社員の壇氏。
意気込みを語っていただいたところでセミナーは終了した。

テクノプロ・デザイン社本社にて

後記

~このセミナーで伝えたかったこと~

ことばだけが先行しているAI、データサイエンティスにおいて、 実際の働き様について、これからデータサイエンティストを目指したい人に感じて欲しかったです。
というのもDX、ニューノーマルいろんな社会変革がされる中で各企業のカルチャーも鋭敏に変化し、その一端としてデータの活用が進むと思います。当然それに沿った求人も増えると思いますが、一方で仕事の本質を理解できていないデータサイエンティストが仕事の現場に立たされギャップに苦しむことになるのではないかと危惧しました。
私が所属するテクノプロ デザインという会社はアウトソーシング、つまり技術者の人材派遣を行なっていますが、仕事の上流工程を任されることが多く「人の質」ということが求められてきます。
単に神業的にプログラミングスキルが高い、ということだけでは仕事にならず、セミナーでも話に出てきましたが「クライアントが何を求めるのか、課題は何か」を察知できる人材が必要になります。 このセミナーではそういったデータサイエンスの現場で求められる本質的な仕事の仕方について少しでも感じていただけたらと思いました。

~今後の展開について~

ーー本セミナーの続き、ボリューム2となると、業務上の具体的事例やアウトプットの仕方、より現場に近い話ができるといいのですが、個人的には、データサイエンティストの10年後、彼らが社会にどんな役割を担うのか、そもそも名称もデータサイエンティストなんて言われてないのではないかなど、その変質をワイワイやりたいなと思っています。
ただ、僕はちょっとアナログでして、できれば会場に人を集めて熱気を感じられるような企画をしたいですね。 オンラインは静かすぎる。
というのも、今回の参加者の半数近くが30歳以下の若い方でした。
職業的にもこの年代層が多いと個人的には感じています。彼らのパワーをモニターの中だけに押し込めるのはもったいない、そう感じています。

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