株式会社テクノプロ

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マニュファクチュアリング・その他製造 DX

ドローンで実現する安全な地下ピット点検で、老朽化建物の危険区域を可視化する

株式会社城口研究所 様

古い建物の改修現場では、建設当時の図面との不一致や立ち入り困難な環境が作業効率を大きく妨げる課題となっていました。建築施工や大規模リニューアル工事を行っている株式会社城口研究所様(以下、城口研究所)は、テクノプロ・コンストラクションの協力のもと、狭隘空間や浸水ピットなどの危険区域にドローンを導入。

撮影・点群データの生成を通じて、従来の「勘と経験」に頼る調査をデータドリブンへ転換しました。安全性・効率性を両立したこの取り組みは、建設業界のDXを象徴する新たなモデルケースとなりつつあります。

昭和期に建設されたビルの狭小地下現場調査に適したドローンを採用

老朽ビル改修現場におけるDX推進の一環として、城口研究所はテクノプロ・コンストラクションと協働し、ドローンを活用した現場調査を導入しました。

今回の対象は、常時浸水や臭気、酸欠など危険要因が多い地下ピットです。人が入れば事故につながる恐れもある環境でした。近年ドローンを使用した測量、計測、点検が建設業界で行われ始めています。

これにより、従来の現場調査で必要だった排水や換気、酸素濃度測定などの工程が不要となり、作業時間を大幅に短縮。人命と設備リスクの両方を回避しながら、現場の「安全」と「効率」を両立する取り組みとして注目を集めています。

対象となったビルは昭和期に建てられ、幾度もの改修が重なった結果、図面と現況の乖離が発生していました。手書き時代の資料が散逸しており、改修担当者ですら「どこに何が通っているか分からない」状態でした。

また、2024年4月から始まった時間外労働上限規制を受け、城口研究所では「現場業務の分業化」と「DXによる生産性向上」を目的にオペレーション推進部を新設。危険作業を減らし、デジタル技術で安全を確保する体制を整えました。

そこで、城口研究所は点検に適したドローン選定、操縦技術力が高いパイロットの手配と安全かつ正確な点検の指示、調査資料を完成させる工程を、ドローン機体に精通し点検現場でのノウハウを持つテクノプロ・コンストラクションに依頼。既存の人材派遣や研修で築かれた信頼関係もあり、同社をパートナーに選定。高い操縦技術と安全運用の実績が採用の決め手となりました。

ドローン「IBIS2」。狭所空間にて安定飛行し、500φ(直径500mm)の空間があれば飛行可能

テクノプロ・コンストラクションが保有するドローン機材から提案したのが、暗所や狭所でも飛行可能な小型ドローン「IBIS2」です。20センチ弱四方の手のひらサイズで、バッテリーを含めた重量は185グラムと非常にコンパクトな小型ドローンです。

狭小空間で自らが巻き起こすダウンウォッシュの影響を受けにくく、対象物に接触しても姿勢を乱さない機体制御技術により、狭い屋内空間でも安定した飛行が可能となります。搭載された高精度カメラとLEDで暗所でも鮮明な映像を取得。リアルタイムで劣化箇所を確認でき、その映像を施主説明資料としても活用できるようにしました。

リアルタイムに鮮明な映像で「現調」、効率と安全を両立しデータを資産化

ドローンで取得した映像や点群データはクラウド上で共有・保存され、現場・管理会社・施主の三者間で同時に確認できる仕組みを整えました。これにより、離れた拠点からもリアルタイムで状況把握が可能に。施主説明資料としての二次利用や、過去データとの照合も容易になっています。

さらに、データの資産化によって現場の属人性が軽減。再調査の手間を省き、次の改修工事や保守にも活かせる「デジタルアーカイブ」としても機能しています。

城口研究所 オペレーション推進部部長の笠原久資氏によると「老朽化した建物の地下ピットの中がどうなっているのか、誰も正確には知らないという状況がよくあります。そうなると、我々のような会社に現状調査の依頼が来ます。まず現調から始まり、その後に見積りや改修計画が動きます」と語ります。「テクノプロ・コンストラクションが提案するドローンを使うことで、その最初の一歩をずっと効率的かつ安全に踏み出せるようになりました」。

従来は人が現場に赴き、排水・換気・測定など複数工程を経て確認していたプロセスが、ドローンの導入とクラウド共有によって一連のワークフローとして統合。効率化と安全性の両立に大きく貢献しました。

「土木ではドローンや点群データの活用が当たり前になっていますが、建築や設備ではまだ限られた現場しか使えていません」と同社オペレーション推進部生産オペレーション課 課長の日比野修氏は指摘します。「だからこそ、こうして安全かつ正確に可視化できる価値を“お金では買えない信頼”として伝えていきたいです」。

地下ピットの点群データサンプル。ドローン「IBIS2」がテクノプロ・コンストラクション研修センター天井裏を計測し、データで飛行・撮影した動画から生成されたもの

また、映像データを3Dモデリングに変換することで、将来的には建物全体を「デジタルツイン」として再現することも視野に入れています。現場データをリアルタイムで共有できるこの基盤は、単なる省力化にとどまらず、今後の保守・運用戦略を支える重要なインフラとしての役割を果たし始めています。

城口研究所 オペレーション推進部部長 笠原久資氏

ドローンと安全×DXで現場の“見える化”を加速する未来戦略

今回の成果を踏まえ、城口研究所では老朽建物を中心にドローン活用を本格展開していく方針です。特に、配管不明箇所や構造内部の可視化を目的に点群データ化を継続し、将来的には建物全体をデジタルツイン化する構想も検討しています。

今後は精度向上や、外壁の打診検査など他技術との連携も視野に入れています。一方で、地下環境での通信減衰や中継機の設置など、技術的課題も残されています。

日比野氏は、今後のニーズについて「格段に増えてくる」と語ります。
「安全最優先とDX推進。当社としても、この両輪で現場の質を上げる取り組みを続けたいと思っています。社内では“ドローン活用範囲の拡充”の声も上がり、デジタルと現場技術の融合を進める動きが加速しています。点群データの精度や通信環境などの課題はまだありますが、ひとつずつ乗り越えれば“現場の見える化”が確実に進むと感じています」

さらに、点群データとAI解析の組み合わせによる自動異常検知や、遠隔臨場の制度化による公的エビデンス化にも期待が寄せられています。

城口研究所 オペレーション推進部生産オペレーション課長 日比野修氏

テクノプロ・コンストラクションはこれらの期待に応え、不動産オーナーや管理会社への価値訴求を強化し、「安全性」「時間短縮」「非破壊確認」といった“お金では買えない価値”を可視化することで、ドローン活用の新しいスタンダードを築いていく考えです。

テクノプロ・コンストラクション社のドローンを使用した測量、計測、点検などのサービスは、経験豊富な技術者が現場調査やヒアリングをもとに、実施運用、データ活用提案などあらゆる面でサポートします。動画データから写真キャプチャ、報告書の作成まで対応でき、さらに条件が整えば、動画データからの点群データ作成、3Dモデル化も可能です。ぜひご活用をご検討ください。

ドローン点検サービスの紹介ページはこちら。サービスに関する資料をダウンロードしていただけます。

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